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RPAで業務のブラックボックス化は進むのか

「RPAを導入すると業務のブラックボックス化が進む」と言って、RPAの導入に反対する人がいます。

現場の感覚としては「逆である」とさえ思える主張なのですが、より適切なRPAの導入を行う為には、その理由(理屈)に参考にするべき点が含まれているようにも思います。

業務のブラックボックス化がRPAで進むという主張の根拠

「業務のブラックスボックス化が進む」、すなわち、「業務の進め方が、誰にも解らない状態になってしまう」という理由でRPAの導入に反対される方は、その理由として、以下のような主張をされる事が多いようです。

  • RPAを導入すると、これまで人が行っていた業務を機械に任せる事になる。
  • 人が業務を行わなくなる事で、その業務の進め方を人が覚えている必要がなくなる。
  • これまで業務を行っていた人がいなくなったりすると、その業務の進め方を知っている人がいなくなる。
  • その業務の進め方を知っている人がいなくなると、機械にトラブルがあった時に困る。また、何かの事情で業務の進め方を見直したい時などに困る。
  • だから、RPAを導入して、業務を機械に任せるべきではない。従来通り、人が行うべきである(または、RPA以外の仕組みで業務を行うべきである)。

では、このような主張は正しいのでしょうか。

RPAで業務のブラックボックス化が進まない理由

結論から言えば、「RPAだから業務のブラックボックス化が進む」という事はありません。

まず、「機械に任せる事によって、その業務の進め方を人が覚えている必要がなくなる」という点については、コンピューターシステムを導入する事による一般的な変化です。RPAを導入した場合だけに発生する現象ではありません。

ですから、コンピューターシステムの導入全てに反対するのであれば別ですが、この点は、RPAの導入だけを反対する理由にはなりません。

また、そのような点を恐れて、「コンピューターシステムを導入しない」という判断は、通常、行われません。

コンピューターシステムには、「効率化」の他にも、「人によるミスをなくす」「人による差をなくす(業務水準の平準化)」などのメリットが期待されます。そして、そのメリットがデメリットよりも大きいと判断されてきたからこそ、導入は行われてきたのです。

また、この記事の後半でも補足しますが、導入によるデメリットを回避する為の方法(注意点)は多くの専門家が理解しており、RPAの導入でも同様の事を気をつければ良いだけの事です。

業務の明確化にRPAが貢献する事がある理由

なお、RPAの導入によって、「業務の明確化が進む」という、「ブラックボックス化の逆」とも言える現象が見られるケースも少なくありません。

RPAを導入しなくても存在する業務のブラックボックス

まず、「社内でも、限られた人のみが行える業務が存在する」という会社は決して珍しくありません。

そして、そのような業務を抱えた会社では、「現在、業務を行っている人がいなくなると、同じ水準では、その業務を進められなくなる」というリスクを、今でも抱えています。

これは、「その業務がブラックボックスになっている面がある」という事を意味します。

すなわち、RPAと関係なく、業務のブラックボックス化が進んでいる会社は多いのです。

RPAの導入で必要となる業務のマニュアル化

しかし、RPAを導入する事になると、「業務のマニュアル化(業務の進め方を細かく書き出す)」という準備作業が必要になります。

そして、この作業は、「業務の進め方を明確化して、誰でも業務が出来る状態にする」という事に繋がります。すなわち、業務のブラックボックス化を解除する効果があるのです。

更に、RPAで業務を自動化すると、その業務を行う難易度は下がります。この為、その部署の人であれば、誰でもその業務が行えるようになる事も珍しくありません。

このように、RPAには「導入を進めた方が、ブラックボックス化が避けられる」という面すらあるのです。

業務のブラックボックス化を避ける為に気をつけるべき点

ただし、RPA以外のコンピューターシステムを導入する時と同様に、業務をブラックボックスにしない為に、気をつけるべき点はあります。

自動化された仕組みの使い勝手を悪くしない

まず、「自動化された仕組みの使い勝手を悪くしない」という事は大切です。出来る限り、「同じ部署の人であれば、誰でも実行出来る仕組み」として導入される事が好ましいでしょう。

本来、RPAによって自動化された業務の実行は、それほど複雑なものではありません。処理を実行する為の簡単な作業(パソコン上での数回程度のクリックなど)を行う事で、処理は始まります。

しかし、導入の仕方によっては、「非常に複雑な準備が必要」や「特定の人にしか実行が出来ない」などの問題を抱えた仕組みとして導入される事もあります。そして、そのような場合、「業務がブラックボックスになっている状態」と同様の問題を抱えてしまう事になります。

なお、そのような問題を避ける為には、現場の事を良く解っている専門家に導入を支援して貰う事です。

実は、RPAや業務の自動化の事が良く解っていない人がRPAを導入すると、そのような導入になりがちなのです。特に、専門でもない社内の従業員に導入を任せた場合、「自分さえ解れば良い」という発想で導入が進んでしまいがちです。ご注意下さい。

自動化された業務に関する資料の保存

また、RPAで自動化された処理の中身が解るような資料を残しておく事も大切です。

本来、RPAは、「機械によってどのような処理が行われているのか」という事が、自動化された後も理解しやすい仕組みにはなっています。しかし、表からは見えづらい部分がある事は否定出来ません(データのチェックや、自動で起動する仕組みの存在など)。

ですから、RPAで行われる処理の内容を後から調べられるような資料を残しておく事は、業務のブラックボックス化を避ける上で大切です。

そもそも、本格的なシステム導入であれば、導入されたシステムがどのような仕組みで動いているのかは、「設計書」などのかたちで残されるのが普通です。RPAでも、それに近い事を意識すれば良いだけの事なのです。

ただし、「RPAだから、そのような作業は不要」と思ってしまう人が多い事は強調しておいた方が良いかもしれません。

そして、この点についての配慮が足りない導入が行われる事が多いのも、社内だけでRPA導入を進めた場合です。ご注意下さい。

最後に、再度、強調しておきますが、「RPAだから、業務のブラックボックス化が進む」という事はありません。それは、「RPAは誰でも簡単に導入できる」といった宣伝文句を経営者が信じ込んでしまい、十分な知識や経験がない人に導入を担当させてしまった場合に限って発生する問題であると言えます。

通常のシステム導入の際と同じような点に注意さえしていれば、RPA導入による業務のブラックボックス化は問題とはなりません。RPAの導入を検討されている方は、安心してRPAへの取り組みを進めて頂きたいと思います。

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